今いる場所で生きる(QG通信2021年夏号vol.16掲載)

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皆様こんにちは。お元気ですか?いつも私のつたない文章をお読み頂きありがとうございます。

植木屋になったからでしょうか?街を歩いていると、変わった木に目が行くようになりました。今日は3本の木をご紹介したいと思います。

1本目は、高速道路のサービスエリアに咲いていた桜の木です。3月下旬の深夜でしたが、淡い白色灯に照らされて、それは見事に咲き誇っていました。疲れたトラック運転手も、ひと時のお花見に酔いしれていました。ふと目線を落とすと、咲く場所を間違ったかのように、幹からちょこんと花が出ていました。皆が頭上に咲く花にスマホを向けていましたが、幹の途中から出ているこの花びらには無関心です。そんな事はお構い無しで、『私も桜ですが、何か?』って言っている様で、思わず撮影してしまいました。

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幹から咲く桜

2本目は、沖縄のゴルフ場に生えていたガジュマルの木です。何も好き好んで岩の上に居住しなくてもいいものを、その岩を死んでも離さないと言わんばかりにしっかり掴んでいます。このガジュマルは、鳥によって種が運ばれ、時には他の木に生えて、その宿主の木を締め付けて枯らすことから「絞め殺しの木」とも言われるそうです。何て図太い木なのでしょうか。絶対に友達にはなりたくないタイプです。

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岩を掴むガジュマルの木

3本目は、家の近所に生えてる木です。種類は分かりません。見つけた時は、一瞬どうなっているのか分かりませんでした。でもよく見ると幹が半分無いのです。それでも天に葉を繁らせ、堂々としています。葉が繁っているという事は、半分になった幹で水を上げて生きているのです。風格さえ感じさせる見事な立ち姿でした。

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半分幹の無い木

今、色々な問題を抱えている方が世の中にいらっしゃると思います。私もその中の1人です。でもこれらの木が教えてくれるのは、「今いる場所で生きる」という事の様な気がするのです。木は自分で引っ越す事もできませんし、食べたい物を買いに出かける事もできません。自分の頭上で注目を浴びている人がいても、柔らかい土に簡単に根を張る人がいても、体が丈夫な人がいても、自分は自分、「今いる場所で生きる」。そんな事を教わった気がしました。

引用元:お客様と「植木屋革命」クイック・ガーデニングをつなぐコミュニケーション誌 クイック・ガーデニング通信 2021年夏vol.16 ,株式会社クイック・ガーデニング,2021年5月31日発行,6ページ