当社には「植木鉢の植替え」というメニューがあります。新しく植替える鉢上部の直径で料金が決まっていて明朗会計です。当社のPR不足もあり、あまり知られていませんが、サービス開始から約2,000名のお客様にご利用いただいています。
創業当初、当社の存在意義は『見放された庭を救う事にある』なんて言っていたことがありました。『見放された庭』とは、住んでいる方も『庭師を入れるほどの庭じゃないし・・』と思い、庭師の側も『一日仕事になる量じゃないので行かない』と、両者から『見放された』という意味です。
マンション住まいの私には庭がないのですが、あるとき、住んでいるマンションを見上げると、じつに3分の1のベランダに植木鉢があったのです。私はとっさに『これも見放された庭だ』と思い、「植木鉢の植替え」というメニューをつくりました。
最初は一部のカットデザイナーに反対されました。なぜなら『植木職人は植木鉢なんかいじらない』と言うのです。それでも、私たちは植木職人ではなく植木『カットデザイナー』ですからと、なかば強引にサービスを開始しました。ただ、その時のカットデザイナーの反発がどこか引っかかっていて、私もこのサービスを積極的にPRしてきませんでした。
しかし、先日、たばこと塩の博物館(東京都墨田区)で開催された『江戸の園芸熱』という浮世絵展を見に行き、その考え方が間違っていると気付きました。江戸時代の植木屋は鉢植えを売ったり、木製の植木鉢に防腐止を塗るなんて仕事も請け負っていたのです。江戸時代の植木職人のほうが、お客様のニーズに応えていて『植木職人は植木鉢なんかいじらない』なんてもっともらしい意見に惑わされていた自分を反省しました。
鉢植えも一つの「お庭」です。木は上に伸びるのと同じくらい下にも根を伸ばします。根は鉢の中で行き場を失うと、根詰まりを起こして枯れてしまいます。当社の植木カットデザイナーも、江戸時代の植木屋さんの気持ちに習い、作業させていただければと思います。
引用元:お客様と「植木屋革命」クイック・ガーデニングをつなぐコミュニケーション誌 クイック・ガーデニング通信 2019年夏号vol.08 ,株式会社クイック・ガーデニング,2019年5月31日発行,4ページ