カクレミノ(隠れ蓑)はヤツデ、アオキと並んで日陰に強い植物として知られています。あまり手間をかけなくても育つ常緑樹で、葉も大きくヤツデに比べ樹形も優しげです。日陰に緑をたたえてくれる庭木として茶庭や店舗の軒先でよく見かけます。その葉は神事での供え物の器として使われてきました。そのことから分かるように、縁起のよいいわれを持つ木なのです。
なぜ縁起がよい?
カクレミノは天狗の民話に出てくる隠れ蓑と形が似ていることから名づけられました。天狗の霊力がこもった藁蓑(わらみの)は、着ると姿を消すことができたのだと言います。「厄災から身を隠す」という意味合いから縁起がよいといわれ、吉祥文様(福を呼び込む縁起のよい文様)の中にも見ることができます。
ちなみに天狗が持っている扇はカクレミノの葉ではなくヤツデの葉がモチーフになっています。
吉祥文様に見られる隠れ蓑
縁起のよいものを集めた吉祥文様と呼ばれる模様は、着物柄などに使われています。お祝いの席で着る宝尽くし紋の中には宝といわれる高価なもの、貴重なものばかり描かれています。そのなかに隠れ蓑が見られます。
■隠れ蓑(かくれみの)
天狗がもつ、着ると姿が他人から見えなくなる蓑。危険から身を隠し守ることができる。
■打ち出の小槌(うちでのこづち)
振れば望みのものが手に入る小槌。敵に打ち勝つ。
■宝珠(ほうじゅ)
望むものが出せる不思議な珠。丸く先がとがり、先端と両側から火焔が燃え上がる。願いを意のままにする。
■丁字(ちょうじ)
スパイスのクローブ。殺菌、沈静効果があり希少価値が高かったことから、宝尽くしのひとつになった。
■分銅(ふんどう)
秤(はかり)で物の重さを量るときに使うおもり。貴重品を量る道具
■宝鑰(ほうやく)
蔵を開ける鍵で、雷文形に曲がっている。富の象徴。
■金嚢(きんのう)
お守りやお金、香料を入れる袋。金運アップの願いが込められている。
■宝巻(ほうかん)
ありがたいお経の巻物。知恵や知識の象徴。
成長とともに形が変わる葉
カクレミノは「成長するにしたがって葉の形が変わる」という特徴があります。幼木のうちは葉の先が分かれて切れ込みが5つまたは3つありますが、葉の切れ込みが徐々に浅くなってゆき、実がみのるころには卵型になります。少ない日差しで育つことから、下の葉にも日差しを届けやすいように、そのように適応しました。古くなってきた葉は紅葉するものもあり、成長とともに変化を楽しめる庭木です。
カクレミノの実
6月~8月の花期に両性花と雄花が同じ株に混じって咲きます。黄緑色の五弁の花は花後に球体の果実ができ、晩秋に熟して黒紫色に色づきます。ヒヨドリやツグミなどの野鳥が好んで食べます。
カクレミノのお手入れ
日陰や湿った土壌などの条件の悪い場所でも育つ庭木です。成長するにつれ下の方の葉は落ち、上の方が茂るので、自然樹形で十分整います。葉が密集して生えないので、枝葉の風通しもそのままで十分良好です。高さを抑えたい場合は春か秋に剪定しましょう。萌芽力が強く、切った脇から新芽が出てくるので剪定の失敗の心配もほとんどありません。
少ない日差しでも育ち、手間もかからないので室内の鉢植えとしても十分成育できます。縁起のよいいわれがあることからも、引っ越し祝いに贈る観葉植物としてピッタリかもしれませんね。
クイック・ガーデニングが手掛けた「カクレミノ」のお手入れ実績がご覧いただけます。
•【Before&After】
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