オレンジ色の小ぶりな実を付ける姿がかわいらしい、近年人気の果樹「キンカン(金柑)」。花の香りがとてもよく、実のなる期間のみならず花期も楽しめます。庭木として、自宅で育てて楽しむポイントをご紹介します。
庭木におすすめの品種
キンカンとは、ミカン科キンカン属の常緑低木の総称で、様ざまな品種があります。観賞用と食用に適したものがあり、それぞれ庭木として育てるのにおすすめの品種をご紹介します。
■ネイハキンカン
日本で多く生産されている、食用に適した品種です。球形で比較的大ぶりな(10g以上)実を付けます。樹高は2メートルほどで、耐寒性があり栽培しやすいですが、まれに短く鋭いトゲが付くことがあります。
■プチマル
食用に適した、タネなし品種です。実は小ぶりですが、苦味が少なくタネが無いので生食にも向いています。樹高は1~2メートルで、鉢植えでも育てやすい品種です。樹勢が強い若木のうちはトゲがありますが、樹勢が落ち着くにつれてトゲが無くなります。
■マメキンカン
小盆栽などに利用されることの多い、観賞用の品種です。球形で1センチほどの小さな実を付けますが、果肉はほとんどなく食用には向きません。「姫キンカン」とも呼ばれ、中国では縁起物としてお正月飾りに用いられます。
■チョウジュキンカン
キンカン属では最も大きな果実を付けますが、酸味が強く甘味や香りが劣るので観賞用とされています。果実は生食には不向きですが、ジャムなどに加工すれば食べることもできます。
キンカンの育て方
キンカンは樹高が2mほどと比較的小ぶりで、庭木として育てやすい果樹です。植付け・植替えは3月~4月が適期となり、水持ちと水はけのよい場所を好みます。
水やりは、鉢植えの場合、過湿で根が傷むことがないよう、土の表面が乾いたら、たっぷりと与えるようにします。地植えの場合は、夏期に日照りが続くときを除いて、基本は雨水で十分です。いずれも、水切れすると葉や実の付きに影響が出ますので、土の様子を見ながら、乾燥しているときにはできるだけ朝のうちに水やりするようにしましょう。
暑さ寒さには比較的強い樹木ですが、寒風が当たると葉が落ちたり根が傷んだりして、花や実が付かず、枯れてしまうこともあります。冬期、関東以北の地域では、鉢植えは日当たりのよい室内に置き、地植えの場合は、根元に腐葉土・わらをかぶせる(マルチング)などの防寒対策をするとよいでしょう。
キンカンを含む柑橘類は、アブラムシやハダニ、アゲハチョウの幼虫などが付きやすいです。とくにアゲハチョウの幼虫は葉を食べ、木を丸裸にしてしまうこともあります。3月~5月に間引き剪定をして、日当たりと風通しをよくしておくと、病害虫の発生を予防できると同時に、幼虫などを発見しやすくなります。万が一、病害虫の発生を確認したときは、なるべく早めに消毒をしましょう。
収穫を楽しむために
キンカンは鉢植えで3年ほど、地植えで4~5年ほどで実を付けるようになります。 自家受粉のため1本でも実を付けますが、ベランダや室内で育てるときには、受粉を助けるため、筆や綿棒などで咲いている花の中心を優しくなでるようにするとよいでしょう。
たくさんの実を付けますが、実をならせすぎると樹勢が弱まり、翌年以降の花付きや実付きに影響します。そのため、ひと枝に1~3個ほどに抑えるよう、摘花または摘果することをおすすめします。また、四季咲き性のものでは、春から秋までに3回ほど花を咲かせます。この場合、1回目に咲いた花と3回目に咲いた花は摘花するとよいでしょう。
果樹は実を付けることで栄養を消費します。樹勢を整え、美味しい実を育てるためには、肥料を施すことをおすすめします。2月ころに寒肥(かんごえ/かんぴ)を、5月と10月にも追肥をするとよいでしょう。
キンカンの実 おすすめ活用法
柑橘類には珍しく皮ごと食べられ、果実に酸味、皮に甘味と苦味があるキンカン。皮ごと食べることで、豊富に含まれるビタミンCやビタミンE、ポリフェノールの一種である「ヘスペリジン」などの栄養素を摂取することができます。
果実が黄色く色づいたら、ひとつ食してみて美味しいときに収穫しましょう。収穫後3日ほどで味が落ちてしまうので、生食するときは早めに食べるようにします。スライスしてサラダに入れても爽やかな風味が楽しめます。たくさん収穫できたときは、ジャムや甘露煮などに加工すると長い期間楽しめます。
観賞、収穫と楽しみが豊富な果樹キンカン。お庭や鉢植えで育ててみませんか。
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•【Before&After】