「シュロ(棕櫚)」は日本(九州南部)、中国に分布するヤシ科の常緑樹です。雄株と雌株が分かれている「雌雄異株(しゆういしゅ)」で、雌株は5月~6月ころ木の上部に黄色い花を密集して咲かせます。
青空に伸びる「シュロ」
シュロは分岐せず垂直に伸び、生長すると樹高5~10メートルほどになります。
葉は天狗の団扇のような熊手型で、古来から勝利の象徴とされており、夏の全国高等学校野球選手権大会の大会歌『栄冠は君に輝く』でも3番の歌詞に「みどり濃きシュロの葉かざす」とうたわれています。
生長が遅く樹姿が大きく乱れることも少ないので、あまり手間のかからない樹木ではありますが、枯れた葉はそのままにしておくと見栄えが悪くなるので、古くなって垂れ下がった葉は取り除くようにしましょう。
生命力旺盛な「ノラジュロ」
シュロは秋に黒く熟した実を沢山つけ、その種が鳥たちに食べられることで広範囲に運ばれます。このようにして、人が故意に植えたものではなく、自然に発芽し生長したシュロを「ノラジュロ」又は「ノジュロ」と呼びます。
ノラジュロは人家や公園、森林などいたる所に発生して群生するため、近年では環境への影響が心配されており、積極的に伐採をすすめている自治体もあるようです。
伐採するときの注意点
樹高が高くなるため、生長したシュロを伐採することは簡単ではありません。またその幹は繊維質で、ノコギリやチェーンソーの刃に毛がひっかかり上手に切れず、思わぬ事故につながることもあるので注意が必要です。とくに梅雨の時期は繊維が水分を含みやすいので、伐採は避けた方がよいでしょう。
また、シュロの幹には多くの水分が含まれているので重量があり、伐採した後のゴミの受け入れ先を見つけることが難しい場合もあります。
意図せず発芽したものは先のことを考えて、生長する前に早めに対処することをおすすめします。
〈シュロの伐採事例〉
日本人の生活を支えてきた「シュロ」
リゾート感たっぷりの南国を思わせる見た目のシュロですが、日本に根づいた歴史は古く、平安時代に執筆された「枕草子」に登場したり、戦国武将の家紋のモチーフとして用いられるなど、日本の暮らしを支え、身近な樹木として親しまれています。
近年では、その旺盛な繁殖力ゆえに伐採が必要となることがある一方で、シュロは様ざまな道具に加工され、私たちの生活の中で利用されています。一例として、シュロ皮の繊維は腐りにくく伸縮性に富むため、縄(「シュロ縄」)や敷物、ホウキやタワシなどに加工され古くから利用されてきました。
また意外なところでは、お寺の鐘を突くための棒(「撞木(しゅもく)」)としても利用されています。繊維質のシュロの材質は鐘を傷めづらく、突いた時の音も柔らかくなるそうです。
クイック・ガーデニングでは、シュロのお手入れ(剪定・伐採)も承っております。