日本の風景「松」を守ろう

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詩歌や絵画、能、庭園、盆栽など、多くの伝統文化に取り入れられており、日本人にとって親しみ深い樹木「松(マツ)」。定期的なお手入れと、病害虫に対する正しい知識で大切な松を守りましょう。

 

日本文化のなかに息づく縁起木

松は寿命が長く、日当たりの良い土地を好みますが、幅広い気候に適応できるため北半球を中心に、北極圏近くから南は赤道直下のインドネシアまで分配しています。

一年を通して葉が青々としていることから、日本では若さや不老長寿を象徴する縁起木として古くから親しまれています。

日本に自生するマツ属には、2本の針葉(針状の葉)が束になって枝先に付く「二葉松(ニヨウマツ)類」と、5本の針葉が枝先に集合する「五葉松(ゴヨウマツ)類」があります。

日本では二葉松類は「赤松(アカマツ)」「黒松(クロマツ)」が自生地域が広く庭木として親しまれ、五葉松類は類の名を冠した「五葉松(ゴヨウマツ)」が代表的な盆栽向きの樹木として知られています。

「みどり摘み」の春

松の先端に4月下旬から、「みどり」と呼ばれる新芽が伸び始めます。その新芽のうちに指先で芽を摘み取る作業を「みどり摘み」と呼び、松には欠かせないお手入れの一つです。

新芽は放っておくと葉が伸びて樹形が崩れる原因となるので、新芽が開く前の5月中旬頃までに摘み取って生長を抑えます。6月を過ぎると新芽が固くなるので、手で摘み取れる柔らかいうちに作業しましょう。

また、新芽は1カ所から5~6本出てきますが、どの程度を残しながら摘むかは、その芽や周囲の枝の勢いと、全体の樹形などをみて決めていきます。一つひとつの新芽に見極めが必要なので、神経をつかう作業です。

マツ(松)の新芽

松の新芽は「みどり」とも呼ばれます

 

秋は「もみ上げ」

みどり摘みのほかにも11月ごろには「もみ上げ」という、枝の下の古い葉を手でしごく、松ならではのお手入れが必要です。松の古い葉は数年すると枯れて自然に落ちますが、古い葉が多いと下ほうの枝に日光が当たりづらくなります。

松は日当りを好む常緑樹なので、もみ上げは日光を差し込みやすくするために欠かせない作業です。また、もみ上げを行うと松につく害虫「マツケムシ(松毛虫)」が葉の間で越冬できなくなるので、害虫予防の効果もあります。

 

虫や病気に負けない健康な松を

「マツカレハ」というガの幼虫であるマツケムシは、集団で寄生して松を食べ尽くしてしまうほど食欲が旺盛です。大きいものだと8センチ近くまで成長する毛虫で、毒針毛があるため触れると大変危険です。

またマツケムシに葉を食べられることにより、樹勢が著しく衰えて抵抗力が弱くなると、カミキリムシが付きやすくなるといわれています。

このカミキリムシによって運ばれる「マツノザイセンチュウ」という微生物が松の木の内部に侵入し、組織を破壊することで枯れてしまうこともあります。

枯れたマツ(松)

枯れてしまい、針葉が茶に変色した松

樹勢が弱っていると「さび病」「すす病」「こぶ病」など、ほかにも様ざまな病気を引き起こします。病害虫は対応が遅れると被害が大きくなり、回復も難しくなるので注意が必要です。

害虫による被害は、気温が高く降雨量の多い5月から夏場にかけて多く発生するので、この時期に備えて消毒を施すことにより被害を未然に防ぐことにつながります。

「みどり摘み」や「もみ上げ」、消毒などのお手入れを定期的に行い、病気に負けない健康な松を育てましょう。
松(マツ)のお手入れカレンダー
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