紅葉はもちろんのこと、新緑の美しさに緑陰の和らかさ、繊細な枝ぶりなど魅力の多い木です。江戸時代から日本人によって作出された園芸樹ともいえます。庭木に鉢植えに盆栽にと、様々な楽しみ方があります。
モミジの特徴
モミジの種類
モミジの育て方のポイント
モミジの植えつけの場所と時期
モミジの病害虫
モミジの施肥
モミジの剪定のコツ
まとめ
モミジの特徴
紅葉(こうよう)と書いて「モミジ」と読ませるほど、秋の葉色はため息の出る美しさです。紅葉の代表である「モミジ」や「カエデ」は分類上ではカエデ属です。葉の切れ込みが深く5つ(5裂)以上分かれているものを「モミジ」、葉の切れ込みが浅い1~3つ(裂)以上の盆栽などを「カエデ」と呼び分けています。紅葉する代表的なものには、ヤマモミジ、イロハモミジなどがあります。しかしあいまいなところもあり、 イロハモミジをイロハカエデと呼ぶ場合もあります。このなかまの分布地は北半球で、カナダのサトウカエデ、ヨーロッパのノルウェーカエデ、日本のハウチワカエデなど、世界各地に様々な美しいカエデがあります。
モミジの種類
世界にある約160種のうち、日本にあるのは35種ほどです。しかし、園芸的にもっともすすんでいる日本では、120種以上もの園芸品種があるため、日本のモミジは世界的にも注目されています。ヤマモミジは日本海側に分布し、イロハモミジよりも葉が大きいです。
イロハモミジは葉が小さく5~7裂で、紅葉が美しく、タカオモミジとも呼ばれており、一般的に庭木に使われるものはこちらになります。 イタヤカエデは寒地や高地に自生し、大形の葉は秋に美しく黄色になる高木性です。ベニシダレやアオシダレは繊細な枝が美しくたれる園芸種です。そのほかにもたくさん園芸種があります。
種類と園芸品種
葉が七裂の種類の【イロハカエデ(タカオモミジ) 】
園芸品種が多く、庭木に多く用いられている種類です。
イロハカエデ(タカオモミジ)の代表品種▼
鴫立沢(シギタツサワ) | 千染(チシオ) | 置霜(オキシモ) |
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人気の園芸種で、秋にはオレンジから真っ赤に紅葉します。 | 萌芽のとき芽が真っ赤になり、庭木や鉢物に多い。 | 小ぶりな葉で、葉の縁が少し内側に丸まった品種です。 |
限り錦(カギ ニシキ) | 日笠山(ヒガサヤマ) |
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葉が深く裂け、ピンクの覆輪斑入り葉です | 新芽は黄色に近い黄緑色で、縁にピンク色を帯び、夏には緑の濃淡に変わります |
葉が五裂の種類の代表品種▼
イタヤカエデ(トキワカエデ) | オニモミジ(カジカエデ) | サトウカエデ |
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裂片は全縁で葉数が多く、秋には黄葉します。 | 葉の長さ6~15センチの大きい種類です。 | 北アメリカ原産で、樹液を煮詰めたものをメープルシロップとして利用します。 |
イロハモミジの変種の【ヤマモミジ】
葉は七裂か九裂の裂片で、イロハモミジよりやや大きく、重鋸歯があります。
ヤマモミジの代表品種▼
紅枝垂(ベニシダレ) | 羽衣(ハゴロモ) |
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葉は細く全裂していて、新緑は赤紫で、しだれる品種。 | 葉柄がなく、一般的なモミジのシルエットとは異なり、面白い葉形です。 |
オオモミジ | 野村(ノムラ) |
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七裂または九裂で、葉径が5~10と大きく、野生に多い種類で、真っ赤に紅葉します。 | 夏の間は葉が緑がかりますが、年中芽から赤く色づいています。 |
その他のカエデ▼
ハナノキ | ハウチワカエデ | ウリカエデ |
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裂岐阜県と愛知県に天然記念物があり、愛知県の県の木にもなっています。春の花は紅色で美しく、雌雄異株(しゆいしゅ)です。 | 葉は7~11に裂になり、葉径7~12cmの大型で、春の開葉と同時に花をつけます。掌状に深く裂けて羽状になり、紅葉はみごとです。 | 葉は卵型で低鋸歯があり、通常、3つから5つに裂けますが、裂け目が浅く掌状のような裂がない品種です。 |
ヒトツバカエデ | アサノハカエデ |
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葉が掌状に裂けず、円卵型です。秋に黄葉します。 | 浅く裂けた葉がアサの葉に似ているのでこの名前が付けられました。 |
イタヤメイゲツ(コハウチワカエデ) | ミツデカエデ |
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葉柄に毛があり、丸みを帯びた柔らかな印象を与えます。 | 葉が三つの小葉になっていて生育が早く高木になります。 |
外国産のカエデ▼
トネリコバノカエデ(ネグンドカエデ) | トウカエデ(サンカクカエデ) | ノルウェーカエデ |
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北アメリカの原産で、生育が早く、公園や街路樹によく用いられます。 | 街路樹や鉢 物に利用されることが多く、刈り込みに強いのでよい姿に仕立てることができます。 | ヨーロッパ産の代表的な 新芽が明るい赤紫色で、のちに光沢のある紅紫色になります。 |
ベニカエデ | ギンカエデ |
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ハナカエデに似た原種で、北アメリカからカナダにかけての原産で、光沢のある鮮やかな赤い葉です。 | サトウカエデで似た種類で、同じように砂糖がとれますが、生産量は少ないです。 |
モミジの育て方のポイント
紅葉の条件は日当たりがよくて湿度が高く、昼と夜の温度差が大きいとことです。温度差によって紅葉が美しくなります。土質は、壌土か腐植質の多い土がよく、適湿地が好ましいです。カエデの繁殖は、種から行われますが、実生にはできないものもあり、また挿し木も難しいので、苗木を選びましょう。ほとんどの苗が接ぎ木によるものです。鉢植え苗は葉のある時期に選ぶと品種も明確です。
モミジの植えつけと場所と時期
腐植質(ふしょくしつ)に富む、水はけのよい土で、樹冠には十分日が当たるが、根元は日陰になって乾燥しすぎないところが理想的です。空気中の湿度は好むが、根の過湿はきらうので、植え穴には堆肥を十分入まぜて、高植えにします。植えつけ後は支柱をしっかり取り付けておくと安心です。植えつけ時期は落葉直後から2月中旬ごろまでにすませましょう。春に植えつけると、樹勢が弱まり、夏にテッポウムシやアブラムシの被害が多くなるので避けたいです。
モミジの病害虫
うどんこ病のほか、テッポウムシ、アブラムシ、カイガラムシ、カミキリムシによる樹皮の食害などが見られるので、定期的な薬剤散布で防除します。特に、夏に日照りが続くとテッポウムシとカミキリムシの幼虫の発生が心配されるので、夏の高温期にはよく水やりをしてあげると、発生を抑えられます。
モミジの施肥
肥培がすぎると美しい紅葉は望めず、 特に窒素過多は絶対に避けなくてはならいので、庭木ではほとんど必要ありません。鉢植えには5月と9月に化成肥料を施しましょう。
モミジの剪定のコツ
カエデ類は樹液の活動がほかの木に比べて早いです。2月には休眠から覚めて樹液が動き出す為、剪定は落葉直後から1月いっぱいには終わらせましょう。2月以降に枝を切ると切り口から樹液が流れ出します。樹液が流れ出てしまうと、樹勢を衰えさせ、枝枯れの原因になるので注意しましょう。剪定はできるだけ自然の樹形をくずさないように注意して整理します。強く伸び出て樹形を乱している枝は、必ずつけ根から切り落とします。 強く切り詰めると再び強い枝が出てきます。細く弱い枝は自然に枯れていくので、風通しをよくするために、切り落としてください。
まとめ
他の樹種に比べて休眠から覚めるのが早く「早寝早起きの庭木」といわれており、年明けには目を覚まし、根が活動を始めます。そのため、モミジは11月~12月が剪定最適期とされており、とくに太い枝に関しては、この時期に剪定することをおすすめします。